奈良県の地価の特徴(平成25年地価公示による)

奈良の地価

イ.奈良県の住宅地
(イ)県全体の地価動向と要因
 平均変動率は△1.1%であり、5年連続の下落(H21△2.1%、→H22△4.5%、→H23△2.9→H24△2.0%、→H25△1.1%)となったが、昨年より下落幅は縮小。県内全市町村において下落となったが、ほとんどの市町村において下落率は縮小した。県北中部の大阪、京都等都心部への利便性、住環境良好な住宅地を中心に、上昇が20地点(昨年0地点)、横這いが39地点(昨年13地点)となった。

(ロ)県庁所在地の地価動向と要因
 奈良市の平均変動率は、△1.5%から△0.3%に縮小。近鉄奈良線・京都線沿線の駅徒歩圏で住環境も良好な住宅地を中心に、10地点が上昇(昨年0地点)、22地点が横這い(昨年3地点)となった。
 学園前、大和西大寺、近鉄奈良、高の原駅徒歩圏は、取引が例年より活発で0~2.5%程度の上昇。但し、人気のある近鉄奈良線・京都線沿線であってもバス圏で利便性の劣る地点は0~△1.5%程度の下落となった。
 市南部のJR線・近鉄橿原線沿線は、利便性・街路条件・区画整然性等が劣り需要低調で△0.5~△2.0%程度の下落。

(ハ)県庁所在地以外の地価動向と要因
 生駒市の平均変動率は、市人口増加(約3.1%/5年)を背景に△0.2%に縮小(昨年△1.3%)。大阪都心部への利便性良好な近鉄奈良線・けいはんな線沿線を中心に下げ止まり傾向を示し5地点が上昇(昨年0地点)、8地点が横這い(昨年3地点)。一方、利便性の劣る近鉄生駒沿線の住宅地は、△0.5~△2.5%程度の下落となった。
 近鉄大阪線沿線で人口増加率県1位(約5.6%/5年)の香芝市、中和地区の中核都市である橿原市にあっては、近鉄五位堂駅、大和八木駅勢圏住宅地を中心に下落率縮小(香芝△1.9%→△0.9%、橿原△1.3%→△0.8%)。香芝市2地点、橿原市2地点が上昇。
 下落率の大きい市町村は、五條市△2.8%、御所市△2.7%、高取町・大淀町△2.4%、上牧町△2.3%等で県南部エリアが占める。利便性劣位による需要減、地場産業衰退・過疎化、宅地供給過多等の要因が考えられる。

(ニ)その他特徴的な変動率を示した地域と要因
 生駒-5は東生駒駅近接で市民病院建設が始まった(平成27年春開院予定)。富裕層の不動産取得意欲の高まり、更なる利便性向上期待から需要が強含みであり、地価は昨年の横這いからやや上昇に転じた(1.6%)。
 奈良県を代表する商業ゾーンである奈良市三条通りに分譲マンション2棟が建設中(平成25年春竣工予定)であり、利便性の良い県北部の商業地域内に分譲マンションが増えつつある。近鉄大和西大寺駅南側近接の商業地域内に新設された共同住宅地の標準地(奈良-53)は、大阪、京都等都心部へのアクセスの良さから地価はやや上昇傾向と思われる。
 県内主要市以外の市町村にあっても、各地域内で選好性の高い駅近接の住宅地(大和高田-3、大和郡山-5、香芝-1、斑鳩-2)、住環境良好な住宅地(広陵-2、田原本-2)は横這いとなった。


ロ.奈良県の商業地
(イ)県全体の地価動向と要因 
 平均変動率は△1.6%であり、5年連続の下落(H21△1.9%、→H22△4.6%、→H23△3.4%、→H24△2.5%、→H25△1.6%)となったが、昨年より下落率は縮小。香芝市が横這い、これ以外の市町村は下落となったが下落率は縮小。上昇は0地点(昨年0地点)、横這いが13地点(昨年3地点)となった。県南部商業地は駅前商店街、路線商業地とも依然下落率が大きく、回復顕著な県北部との地域間格差が拡大している。

(ロ)県庁所在地の地価動向と要因
 奈良市の平均変動率は、△1.3%から△0.5%に縮小。平成24年上期は原発放射能漏れ事故により減少していた外国人観光客数が順調に回復、近鉄奈良駅周辺の全体通行量も徐々に回復(8月の中心市街地通行量調査では、歩行者のみで前年比+0.6%、自転車含めると+2.6%)していたが、下期は9月の尖閣国有化後に中国人観光客が激減(特に団体旅行客)、景気低迷もあって、奈良5-1・5-5・5-8は横這いに留まった。中国との関係悪化は長期化が懸念されるものの、商店街関係者への聴取によると、尖閣国有化後激減していた中国人観光客は徐々に戻りつつある。
 近鉄奈良駅、大和西大寺駅、学園前駅周辺商業地はほぼ横這い。なお、近鉄奈良駅前の事務所、店舗に一部空室が見られるが、賃料引き下げない強気のオーナーが多いことも影響している。JR奈良駅、新大宮駅周辺は需要が若干弱く0~△0.5%程度の下落。路線商業系は0~△1.5%程度の下落となった。

(ハ)県庁所在地以外の地価動向と要因
 生駒市は、生駒駅北側再開発が進捗中で生駒5-1がある南側エリアの相対的地位はやや低下。好立地での長期間の空店舗・事務所は、賃料引き下げが行われていないケースが多い。平均変動率は△1.2%(昨年△2.1%)の下落となった。
 橿原市は、大和八木駅前の好立地物件についてはほぼ横這い。路線商業地は平成24年春に前面開通した中和幹線、大規模ショッピングモールに店舗需要がシフトしつつある。平均変動率は△0.9%(昨年△1.7%)の下落となった。
 県中南部市町村は、香芝市の0.0%を除き、△1~△3.5%程度の下落。県内下落率上位は五條市、大淀町、大和高田市、御所市等の県南部市町村が占め、県北部エリアより下落率が大きい。特に駅前商店街は閉鎖、空店舗が多く、下落率は若干緩まったが状況は以前と同じ。人口減少、地場産業衰退、周辺大規模SCへ顧客流出等の要因が考えられる。

(ニ)その他特徴的な変動率を示した地域と要因
 香芝市商業地は、市の人口増加(約5.6%/5年、県内1位)を背景に、近鉄五位堂駅北側エリアの熟成度が高まってきたこと等により、県内唯一の平均変動率横這いとなった(他市町村の商業地平均変動率は全て下落)。
 大和高田5-1は、平成22年に閉店した大規模商業施設の跡地利用が決まり、24年度中に大手スーパーが出店予定であるが、商店街の通行量は閉店前水準には戻っておらず、下落率△4.2%で県内1位となった。
 生駒5-2は、至近で市民病院建設が始まったことにより(平成27年春開院予定)、薬屋、花屋等の関連業種需要が高まりつつあり、下落率が△0.4%(昨年△1.2%)に縮小した。


ハ.奈良県の工業地
(イ)県全体の地価動向と要因 
 平均変動率は△1.8%であり、引き続き下落となったが、昨年より下落率が縮小した(昨年△2.9%)。円高により輸出関連企業の業績は依然厳しいものの、震災後の復興需要が見込まれる大手ハウスメーカー、円高メリットを享受できる内需中心の企業業績は堅調である。電力不足、電気料金の引き上げ問題が産業界にとっての懸念材料になっている。なお、政権後退後、デフレ脱却に向けた経済政策への期待から円安、株高が進んでおり輸出関連企業の業績回復が期待される。

(ロ)県内工業団地の地価動向と要因
 北田原工業団地内の生駒9-1は△1.5%で下落率が縮小した(昨年△2.2%)。地域外幹線(国道163号)へのアクセス道路工事が進捗中で、完成後は街路条件向上による需要増が期待される。
 県内工業出荷の3割強を占める昭和工業団地内の大和郡山9-1は△1.6%で下落率が縮小した(昨年△3.6%)。西名阪自動車道「大和まほろばスマートI.C(名古屋方面出入口)」がH24.7.4に開通し利便性が向上した(大阪方面はH26に開通予定)。平日1日の平均利用台数は予想を約27%上回り、その約7割程度が昭和工業団地内企業の利用と言われている。大手家電メーカーの事業縮小、人員削減等はあるが、敷地の一部に大手ハウスメーカー関連会社が移転する等代替が進んでいる。
 業績悪化に苦しむ大手家電メーカーの工場が県内に3工場あり、従業員削減、給与カットの他、一部工場の撤退の動きもある。県内には下請け企業も多く(全国12位、1・2次含む)、全国的には下請け企業(業績把握可能な1万社)中4割超が2011年度中の決算で減収となったとの報道もある。現時点で公示価格への目立った影響は見られないが、地元不動産業者への聴取では、大手家電メーカー従業員の不動産需要、物件問い合わせが減少しているとのこと。
 西九条工業団地内の大手ハウスメーカー工場は、震災後の復旧・復興需要、政府の住宅取得支援等により比較的好調を維持している模様。
 五條9-1は、住宅地への用途転換も可能な工業地であり、下落率は△3.2%となった(昨年△4.1%)。

(ハ)県内工場立地状況
 平成24年上期の工場立地件数は10件で前年同月比8件増(25%増)(全国は16.4%増)。立地件数は全国19位で近畿7府県(福井含む)中4位。なお、1万㎡を超える用地の工場立地が4件あったことから、1社当たりの平均敷地面積は13千㎡で昨年同期3.3千㎡から大きく増加した。

(ニ)その他特徴的な事項
 昭和工業団地内でここ2年ほど未利用であった工場跡地約20,000㎡に運輸関連企業が進出した。但し、県内には本格的は物流倉庫は少なく、運輸会社の配送センターが各地に見られる程度である。


ニ.地域制策、取組について
(イ)地域活性化の施策等
・記紀万葉プロジェクト
古事記完成1300年にあたる平成24年(2012年)から日本書記完成1300年にあたる平成32年(2020年)までの9年間をつなぎ、記紀・万葉集についての価値意識の醸成、「記紀・万葉集で楽しむ県」というブランドイメージの創出、ひいては来県者増加につなげる長期スパンの事業がスタートした。
・せんとくんプレミアム商品券を消費喚起策として1300年祭後も継続発行した。(H23.11月発行分総額34億5千万)。
・奈良県南部地域復興支援プレミアム旅行券をH23.11月発行(1枚8,000円、額面10,000円、年間発行枚数20,000枚)。

(ロ)公共機能、主な公共交通機関等の導入やその予定。
・京奈和自動車道橿原高田I.C~御所I.CがH24.3供用開始、御所御所I.C~御所南I.CはH26年度供用開始予定。
・平成24年3月に中和幹線の香芝市一部区間が供用開始され、事業開始から32年を経て、香芝市田尻から桜井市脇本までの前線約22.2kmが繋がった。
・平成24年7月、西名阪自動車道「大和まほろばすマートインターチェンジ(名古屋方面出入口)」が開通。平日1日の平均利用台数が目標の600台を上回る760台程度となり、利便性が向上している。なお、大阪方面は平成26年に開通予定。

H25奈良の地価

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